
先輩、田舎物の怪談を教えて下さい!

それなら「パンドラ」がおすすめだよ

詳しくお願いします!
怪談情報

タイトル | 禁后〜パンドラ〜 |
ジャンル | 田舎ホラー, オカルト |
文字数 | 約15,000文字 |
出典 | 洒落にならないほど怖い話を集めてみない?(2ch) |
禁后〜パンドラ〜の簡単な説明
パンドラとは、一見ただの古い家です。しかし、窓やガラスはあるものの、玄関はありません。
また家の中には、1階と2階にそれぞれ鏡台が置いてあります。
鏡台の中身はある程度判明しており、名前が書かれた紙がそれぞれの1段目と2段目に納められています。書かれている名前とは、1階は「紫逅」、2階は「禁后」です。
加えて、1階の鏡台には、1段目に爪、2段目に歯も共に納められています。
この鏡台の異常性は、3段目の中身を見た人に発生します。
3段目の中身を見た人は、自分の髪を食べ始めます。このとき、周囲の声に反応する様子はなく、一心不乱にしゃぶり続けます。
このようになってしまった場合の対処法は存在しません。

要するに、3段目の中身を見た人を廃人にする鏡台ってことですか?

その通り。次は、この鏡台を使用した儀式について詳しく見ていこう
とある家で代々行われていた儀式の詳細
この儀式は、ある家系で母から娘へと代々受け継がれていたものです。
儀式の目的
儀式の目的は、誰も見たことも聞いたこともない誰も知り得ない場所に到達すること
そこは、儀式で資格を得た母親たちが暮らし、決して汚れることのない楽園です。そうして新たな命を手にすることが目的です。
儀式の準備
この儀式を行うために必要なものは、2人か3人の娘と鏡台です。
そして、娘のうちの1人に儀式の素材にするための教育を施します(この娘を以後、Aと呼称)
またAには隠し名が与えられ、儀式の最終段階で始めて明かされます。

自分の娘を素材にしてしまうんですか!?

この儀式の恐ろしいところは、これからだよ
儀式に適した素材は、「歪んだ常識」「歪んだ価値観」「歪んだ嗜好」などを持つ者。その素材を作り上げるために、Aにはこのような教育が施されます。
- 猫、もしくは犬の顔をバラバラに切り分けさせる
- しっぽだけ残した胴体を飼う
- 猫の耳と髭を使った呪術を教え、その呪術で鼠を殺す
- 蜘蛛を細かく解体させ、元の形に組み直させる
- 糞尿を食事に
……などなど
これが13年もの間続くのです。
儀式の手順
儀式は全部で3段階あります。Aの教育を進めるのと同時に、2段階目まで進んでいきます。
儀式の内容を、段階ごとに見ていきましょう。
Aが10歳になったとき
Aが10歳の誕生日を迎えると、鏡台の前に連れていき爪を提供させます。
爪を提供させるというのは、「切る」のではなく「剥がして」提供させます。それも、母親が剥がすのではなく、自身で剥がさせます。剥がす指・枚数は、母親の代によって異なります。
爪は鏡台の1段目に隠し名が書かれた紙とともに収納され、母親はその日中、鏡台の前で過ごします。
Aが13歳になったとき
Aが13歳の誕生日を迎えると、同様に鏡台の前に連れていき今度は歯を提供させます。
やはり13歳までに抜けた乳歯ではなく、生えているものを自分で抜いて提供させます。
歯は2段目に隠し名が書かれた紙とともに収納され、母親はその日中、鏡台の前で過ごします。
そして、この日、Aへの教育は終了し、自由が与えられます。
Aが16歳になったとき
Aが16歳の誕生日を迎えると、母親は鏡台の前で娘の髪を食べます。これが最後の儀式です。
髪を食べ終えると、母親はAの隠し名を告げます。翌日以降、母親はひたすら自分の髪をしゃぶり続ける廃人となるのです。
儀式のその後
儀式が終了すると、楽園へと旅立った母親の抜け殻が残されます。それは、死ぬまで隔離されるのです。
Aはというと、儀式の材料に選ばれなかった他の娘により保護されます。
そして、髪が元の長さに戻るころ、子を作り同じ儀式を繰り返します。
呪いのきっかけとなった事件

儀式については分かりましたが、あの鏡台の異常性の原因はなんなのですか?
八千代と貴子という母娘に起きた事件がきっかけです。
八千代は、例の儀式を行なっていた家系の末裔で、母親からそのような習慣があったということを聞いてはいました。
しかし、時代は流れそのような儀式は廃れていき、八千代自身も儀式には微塵も興味がありませんでした。
八千代は、純粋な恋愛結婚の末にひとりの子を授かります。その子は貴子と名付けられ、大事に育てられました。
このまま幸せな日々が続くかと思われましたが、貴子の10歳の誕生日に事件が起こります。
八千代が出かけている間に、貴子が死亡してしまうのです。爪が剥がされ、歯が抜かれた状態でした。

儀式と同じじゃないですか!

夫が妻から聞いていた儀式を聞き齧りの知識で実践しようとしたと推測されます
その後、八千代は自殺、夫は大量の髪を口に含んだ状態で死亡しているのが発見されました。
連絡を受けた八千代の両親は、鏡台に呪いをかけ家の中に安置しました。
禁后~パンドラ~のポイント

「禁后~パンドラ~」のポイントはこの3つだよ
- 田舎ホラー特有の謎の習慣
- 言い様のない気味の悪さ・後味の悪さ
- 謎の真相まで書かれている
都会には無い田舎特有の不思議な習慣がテーマ
田舎のような閉鎖社会には、他の地域にはない特有の習慣が発達したりするものですが、「禁后(パンドラ )」ではそのような習慣がテーマになっています。
その習慣とは、母から娘へと代々受け継がれる「ある儀式」のことです。
儀式の目的は、「母親が楽園へと行くこと」です。そのために、娘に13年の月日をかけて「教育」を施し、儀式を進めていきます。

この「教育」の内容がなかなかエグくて、耐性のない人だと気持ち悪くなるかもしれません……
言い様のない気味の悪さ・後味の悪さ
理由を教えられず話題に出しただけで怒られる空き家に、子どもたちが興味本位で入ってしまいます。そこで取り返しの付かない事態が起こってしまいます。
周りの大人たちは、そこが危険な場所だと知っていたからこそ親心で叱っていたのだと思いますが、理由も分からずになぜか怒られるという状況に子どもたちが一層興味を持ってしまうというのは皮肉な話です。
しかも、そこで取り返しの付かない事態が発生するのですから、子どもたちとしても大人たちの言うことを聞いていれば良かったと悔いても悔いきれないでしょう。
謎の真相まで書かれている
このストーリーでは、子どもたちが巻き込まれた「呪い」の発端となった悪習および事件まで明かされます。
あれは結局なんだったんだろうとモヤモヤせずに済むのですが、理由が分かってスッキリ!ともならないのが、この話の気味悪さを助長しています。
「禁后 ~パンドラ ~」を読めるサイト

ちなみに、この話はどこで読むことが出来るんですか?

おすすめのサイトを3つ紹介するね。
- 【厳選】洒落怖まとめ 〜2ch怖い話・師匠シリーズ〜
- 恐怖の泉
- 怖話
【厳選】洒落怖まとめ 〜2ch怖い話・師匠シリーズ〜
このサイトは、非常に多くの洒落怖が掲載されているサイトです。
洒落怖を読みたいと思ったら、とりあえずこのサイトを探してみると良いです。
参照 https://horror2ch.com/archives/2281555.html
恐怖の泉
このサイトは、心霊系や不思議な話などが多数まとめられているサイトです。
「あの都市伝説の怖い話読んでみたいな」と思ったら、このサイトを探してみると良いです。
参照 https://xn--u9jv84l7ea468b.com/kaidan/55wa.html
怖話
このサイトは、怪談が好きなユーザーがオリジナルの怪談を投稿し、怪談クリエイターを応援することが出来ます。
怪談に特化したpixiv、ホラーに特化した小説家になろうといえば分かりやすいでしょうか。
怖話の公式がこういったネット怪談もコンテンツとして投稿してくれており、なんと26000を超える怪談が投稿されています。※本記事投稿時(2022-08-16)
参照 https://kowabana.jp/stories/1
考察編
さて、あらすじとポイントの解説と、本文を読めるサイトの紹介までが終了しました。
ここからは、考察編です。
禁后の読み方は?
結論から申しますと不明です。理由をつけて、こうじゃないかと推測することは可能ですが、これが確定版だとするものは存在しません。
例えば「パンドラ」はどうか。パンドラは、本文中で家を指す言葉として登場しています。勘違いしやすいところですが、禁后の読みではありません。加えて、このような記述があります。
そういった謎めいた要素が興味をそそり、いつからか勝手に付けられた「パンドラ」という呼び名も相まって、当時の子供達の一番の話題になっていました。
(この時点では「禁后」というものについてまだ何も知りません。)
このように、パンドラという名称は「勝手に付けられた」と明言されています。
「ドアがない」「話題に出すだけで厳しく叱られる」という特異性から、開けてはならない家、パンドラの家と呼ばれるようになったのではないでしょうか。
他の考察として「やちよ」であるとするものがあります。この説はとてもよく練られており、私も好きな説です。
一般的な読み方ではありませんし、母親の名前とする法則性があったとしても知っているのはおばあちゃんだけ。おばあちゃんは既に抜け殻となっているので、母親以外誰も知らないことにも矛盾しない。
加えて、儀式の第3段階で初めて自分の隠し名を知ったとしても、一発で読みに何が当てられているのか理解できる点も素晴らしいです。
しかし、気になるところが1点(これだけの考察を展開してツッコミどころが少ないのがすごい)
この考察をしてくださった方のnoteにはこのような記述があります。
娘は 母との関係を この時点で 断たれる事となり それは すなわち 娘が 母の負う いわば呪禁・霊性の一切を 名と共に背負う事を示す
これは、母親に取り憑いている霊やかかっている呪いを、儀式によって娘に移すと解釈しました。確かに、楽園と言われるような場所には、霊や呪いが憑いていれば行けないでしょう。
しかし、これを真であるとするならば、代を重ねる度に霊や呪いが強くなっていくのではないでしょうか。
すなわち、儀式にこの意味合いが存在するならば、いずれ霊や呪いの力に負ける(=儀式が成立しなくなる)ときが来るのです。
詳しくは、元のnoteをご覧ください。

私は、この考察以上に練られたものを知りません。それでもツッコミどころがあるあたり、今は分からないとする他ないのです。
ところで、私はこれを書いていて、そもそもの儀式の意味が違ったのではないか? と思い当たりました。次は、儀式の意味について考察してみます。
儀式の意味とは?
元々は、穢れを祓うことが目的だったのではないかと考えました。

この考察はこちらの方の考察を踏まえてのものです。先に読んでおくことを強くお勧めします。
よろしいでしょうか? これを読んでいるということは、noteを読んだという前提で話を進めさせていただきます。
読みについての考察で触れた通り、私が違和感を覚えたのは「代を重ねるごとに霊や呪いの力が強まっていくはず」という点です。
これは、代々継承する儀式としては不適当な性質です。
しかし、初代が自分のことだけを考えて実行したならば、この性質がさほど問題にならなくなるのです。
そのキーとなるのが「穢れ」です。かつて日本には「穢れ」という考え方が存在していました。穢れとは「不潔・不浄等、理想ではない状態のこと」を指すとWikipediaに記述されています。
また、本文では楽園と言われていますが、日本の文化で考えるなら、極楽のことを指すと思われます。極楽とは穢れのない清浄な仏の国土です。
その極楽へと行くためには、穢れを落とさなければならないと考えたのでしょう。
初代は、自分の娘を素材にして、穢れ落としの儀式を行いました。
- 自分の子を使ったのは、他者に迷惑をかけられないというエゴでしょうか
- 息子ではなく娘を使ったのは、生理や妊娠で女性は穢れるという考えが存在していたため、少しでも罪悪感を軽減するためでしょうか
- 10歳、13歳、16歳の誕生日で儀式を行うのは、初経や性交・妊娠のタイミングと合わせたかったからでしょうか
- 教育に虫や動物の生死に関わるものが多いのは、既に自分は穢れているという意識を刷り込み、儀式の忌避感を和らげ、母親自身の罪悪感を軽減させるためでしょうか
- 娘を2人以上用意するのも、儀式後の世話をさせることで罪悪感を軽減するためでしょうか
このようにして起こった穢れを娘に移していく習慣ができたのではないでしょうか。
「禁后~パンドラ~」を読んだ方におすすめの怪談

パンドラ……めちゃくちゃ怖かったです。次はどんな怪談を読もうかな……。

お、それなら、「リゾートバイト」はどうかな?

それはどんな話なんですか?
「リゾートバイト」は、「禁后 ~パンドラ ~」と同じように田舎特有の怖さがテーマになった怪談です。
リゾートに旅行に行くついでに現地でバイトをしようという話になった大学生たちが、バイト先の旅館である恐怖体験をします。
その恐怖体験は、かつてその土地で行われていたある儀式が原因となって引き起こされていました。
田舎ホラーやオカルトホラーが好きな方には、ぜひ読んでほしい作品です。
詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
コメント